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SEM_OVERVIEW(7)
SEM_OVERVIEW(7) Linux Programmer's Manual SEM_OVERVIEW(7)

名前

sem_overview - POSIX セマフォの概要

説明

POSIX セマフォを使用すると、プロセスやスレッド間でその動作を同期させることができる。
 
セマフォは整数であり、その値は決して 0 未満になることは許されない。セマフォに対してできる操作は 2 つである: セマフォ値を 1 増やす ( sem_post(3));セマフォ値を 1 減らす ( sem_wait(3))。セマフォの値がすでに 0 の場合、セマフォ値が 0 より大きくなるまで sem_wait(3) 操作は停止 (block) する。
 
POSIX セマフォには、名前付きセマフォ (named semaphore) と名前なしセマフォ (unnamed semaphore) の 2つの形がある。
名前付きセマフォ
名前付きセマフォは /somename という形式の名前で識別される。その名前は、最大で NAME_MAX -4 (すなわち 251) 文字の NULL 終端された文字列で、スラッシュで始まり、スラッシュ以外の文字が 1 文字以上続く形式である。 sem_open(3) に同じ名前を渡すことにより、2 つのプロセス間で同じ名前のセマフォに対し操作を行うことができる。
 
sem_open(3) 関数は、新しい名前付きセマフォを作成するか、既に存在する名前付きセマフォをオープンする。セマフォをオープンした後は、 sem_post(3) と sem_wait(3) を使ってセマフォを操作できる。プロセスがセマフォの使用を終えた際は、 sem_close(3) を使ってセマフォをクローズできる。あるセマフォをどのプロセスも使用しなくなると、 sem_unlink(3) を使ってそのセマフォをシステムから削除することができる。
名前なしセマフォ (メモリベース・セマフォ)
名前なしセマフォは名前を持たない。その代わり、セマフォは、複数スレッド間で共有されるメモリ領域、もしくは複数プロセス間で共有されたメモリ領域に置かれる (前者を スレッド共有セマフォ (thread-shared semaphore)、後者を プロセス共有セマフォ (process-shared semaphore) と呼ぶ)。スレッド共有セマフォは、同じプロセス内のスレッド間で共有されるメモリ領域、例えば大域変数 (global variable) に配置される。プロセス共有セマフォは、共有メモリ領域 (例えば、 shmget(2) を使って作成できる System V 共有メモリ・セグメントや shm_open(3) を使って作成できる POSIX 共有メモリ・オブジェクト) 内に配置しなければならない。
 
名前なしセマフォは、使用する前に sem_init(3) を使って初期化しなければならない。セマフォは sem_post(3) と sem_wait(3) を使って操作できる。セマフォがもはや必要なくなったときや、セマフォが置かれているメモリを解放する前には、 sem_destroy(3) を使ってセマフォを破棄すべきである。

この節の残りでは、POSIX セマフォの Linux の実装の詳細について説明する。

Versions

バージョン 2.6 より前のカーネルでは、Linux は名前なしのスレッド共有セマフォのみをサポートしていた。 Linux 2.6 と NPTL スレッド実装を提供している glibc が入ったシステムでは、POSIX セマフォの完全な実装が提供される。

持続性

POSIX 名前付きセマフォはカーネル内で保持される。 sem_unlink(3) で削除されなければ、セマフォはシステムがシャットダウンされるまで存在し続ける。

リンク

POSIX セマフォ API を使用したプログラムは cc -pthread でコンパイルし、リアルタイムライブラリ librt とリンクしなければならない。

ファイルシステム経由での名前付きセマフォへのアクセス

Linux では、名前付きセマフォは仮想ファイルシステム (virtual file system) 内に sem. somename という形の名前で作成される。仮想ファイルシステムは通常 /dev/shm 以下にマウントされる。 (これが、セマフォの名前の文字数の上限が NAME_MAX ではなく NAME_MAX -4 となっている理由である。)
 
Linux 2.6.19 以降では、このディレクトリ配下のファイルに対して ACL を設定でき、オブジェクトへの許可をユーザ単位、グループ単位で制御することができる。

準拠

POSIX.1-2001.

注意

System V セマフォ ( semget(2), semop(2) など) は古いセマフォ API である。 POSIX セマフォは System V よりも簡単で、うまく設計されたインタフェースを提供している。一方で、POSIX セマフォは System V セマフォと比べると利用できるシステムが少ない (特に、古いシステムでは少ない)。

各種の POSIX セマフォ関数を使用した例が sem_wait(3) に記載されている。

関連項目

sem_close(3), sem_destroy(3), sem_getvalue(3), sem_init(3), sem_open(3), sem_post(3), sem_unlink(3), sem_wait(3), pthreads(7)

この文書について

この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 3.51 の一部である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は http://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。
2012-05-13 Linux