しきのえ
子規の画

冒頭文

余は子規(しき)の描いた画(え)をたった一枚持っている。亡友の記念(かたみ)だと思って長い間それを袋の中に入れてしまっておいた。年数(ねんすう)の経(た)つに伴(つ)れて、ある時はまるで袋の所在を忘れて打ち過ぎる事も多かった。近頃ふと思い出して、ああしておいては転宅の際などにどこへ散逸するかも知れないから、今のうちに表具屋へやって懸物(かけもの)にでも仕立てさせようと云う気が起った。渋紙の袋を引き

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 夏目漱石全集10
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1988(昭和63)年7月26日