わがはいはねこである
吾輩は猫である

冒頭文

一 吾輩(わがはい)は猫である。名前はまだ無い。 どこで生れたかとんと見当(けんとう)がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めて人間というものを見た。しかもあとで聞くとそれは書生という人間中で一番獰悪(どうあく)な種族であったそうだ。この書生というのは時々我々を捕(つかま)えて煮(に)て食うという話である。しかしその当時

文字遣い

新字新仮名

初出

「ホトトギス」1905(明治38)年1月~8月

底本

  • 夏目漱石全集1
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1987(昭和62)年9月29日