二月二十八日には生暖(なまあた)たかい風が朝から吹いた。その風が土の上を渡る時、地面は一度に濡(ぬ)れ尽くした。外を歩くと自分の踏む足の下から、熱に冒(おか)された病人の呼息(いき)のようなものが、下駄(げた)の歯に蹴返(けかえ)されるごとに、行く人の眼鼻口を悩ますべく、風のために吹き上げられる気色(けしき)に見えた。家へ帰って護謨合羽(ゴムがっぱ)を脱ぐと、肩当(かたあて)の裏側がいつの間(ま)