めいあん
明暗

冒頭文

一 医者は探(さぐ)りを入れた後(あと)で、手術台の上から津田(つだ)を下(おろ)した。 「やっぱり穴が腸まで続いているんでした。この前(まえ)探(さぐ)った時は、途中に瘢痕(はんこん)の隆起(りゅうき)があったので、ついそこが行(い)きどまりだとばかり思って、ああ云ったんですが、今日(きょう)疎通を好くするために、そいつをがりがり掻(か)き落して見ると、まだ奥があるんです」 「そう

文字遣い

新字新仮名

初出

「朝日新聞」1916(大正5)年5月26日~12月14日

底本

  • 夏目漱石全集9
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1988(昭和63)年6月28日