まぼろしのたて
幻影の盾

冒頭文

一心不乱と云う事を、目に見えぬ怪力をかり、縹緲(ひょうびょう)たる背景の前に写し出そうと考えて、この趣向を得た。これを日本の物語に書き下(おろ)さなかったのはこの趣向とわが国の風俗が調和すまいと思うたからである。浅学にて古代騎士の状況に通ぜず、従って叙事妥当を欠き、描景真相を失する所が多かろう、読者の誨(おしえ)を待つ。 遠き世の物語である。バロンと名乗るものの城を構え濠(ほり)を環(めぐ)ら

文字遣い

新字新仮名

初出

「ホトトギス」1905(明治38)年4月

底本

  • 倫敦塔・幻影の盾
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1952(昭和27)年7月10日、1968(昭和43)年9月15日20刷改版