へんなおと
変な音

冒頭文

上 うと〳〵したと思ふうちに眼が覺(さ)めた。すると、隣の室(へや)で妙な音がする。始めは何の音とも又何處から來るとも判然(はつきり)した見當が付かなかつたが、聞いてゐるうちに、段々耳の中へ纒まつた觀念が出來てきた。何でも山葵卸(わさびおろ)しで大根(だいこ)かなにかをごそごそ擦(す)つてゐるに違ない。自分は確に左樣(さう)だと思つた。夫(それ)にしても今頃何の必要があつて、隣りの室(へ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 漱石全集 第十七巻
  • 岩波書店
  • 1957(昭和32)年1月12日