へんなおと
変な音

冒頭文

上 うとうとしたと思ううちに眼が覚(さ)めた。すると、隣の室(へや)で妙な音がする。始めは何の音ともまたどこから来るとも判然(はっきり)した見当(けんとう)がつかなかったが、聞いているうちに、だんだん耳の中へ纏(まと)まった観念ができてきた。何でも山葵(わさび)おろしで大根(だいこ)かなにかをごそごそ擦(す)っているに違ない。自分は確(たしか)にそうだと思った。それにしても今頃何の必要があって、

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 夏目漱石全集10
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1988(昭和63)年7月26日