ぶんちょう
文鳥

冒頭文

十月早稲田(わせだ)に移る。伽藍(がらん)のような書斎にただ一人、片づけた顔を頬杖(ほおづえ)で支えていると、三重吉(みえきち)が来て、鳥を御飼(か)いなさいと云う。飼ってもいいと答えた。しかし念のためだから、何を飼うのかねと聞いたら、文鳥(ぶんちょう)ですと云う返事であった。 文鳥は三重吉の小説に出て来るくらいだから奇麗(きれい)な鳥に違なかろうと思って、じゃ買ってくれたまえと頼んだ。ところ

文字遣い

新字新仮名

初出

「大阪朝日」1908(明治41)年6月

底本

  • 夏目漱石全集10
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1988(昭和63)年7月26日