らいじん |
| 雷神 |
冒頭文
雷さまといえば、虎の皮の褌をしめた鬼が、沢山の太鼓をたたいている姿を思い出す。 ああいう雷さまは、一体誰が考案したものか知らないが、なかなかいい。雷と電光とは、夏の景物の中では、出色のもので、少々怖いが、しかし威勢がよくて、悪気がない。虎の皮の褌をしめた雷さまも、決して悪鬼ではなくて、何となく親しめる鬼である。 その雷さまの中での傑作は、宗達の『風神雷神』ではないかと思う。先年アメリカ各地
文字遣い
新字新仮名
初出
「西日本新聞」1955(昭和30)年8月
底本
- 中谷宇吉郎随筆選集第三巻
- 朝日新聞社
- 1966(昭和41)年10月20日