ゆきおとこ
雪男

冒頭文

ヒマラヤの山奥に、人間に似た怪獣が住んでいるという伝説は、ずっと昔からあった。ヒマラヤの住人たちは、この怪人をヤティ(縁起の悪い雪男)と呼んでいるそうである。 この怪人のことが、急に問題になり出したのは、今から四年前に、英国のエヴェレスト登山隊長シプトン氏が、その足跡の写真を発表したのが、きっかけである。 エヴェレストに近いメンルンツェ氷河の上で、雪の上に、長さ一フィートばかりの、人間の足

文字遣い

新字新仮名

初出

「西日本新聞」1955(昭和30)年7月

底本

  • 中谷宇吉郎随筆選集第三巻
  • 朝日新聞社
  • 1966(昭和41)年10月20日