やわたうまとすみのけんきゅう
八幡馬と墨の研究

冒頭文

もう二十年以上も昔の話であるが、寺田寅彦先生が、墨流しの研究をされたことがある。この研究は、墨と硯との研究に発展し、東洋の墨は、非常に不思議な性質を持っていることがわかった。 この研究は、先生の晩年のいろいろ多方面にわたる研究の中でも、とくに注目すべき業績である。しかしこの研究が完成を見ないうちに、先生は亡くなられてしまった。 一番惜しい点は、この研究が、日本の普通の墨と硯だけについて、行

文字遣い

新字新仮名

初出

「東京新聞」1959(昭和34)年4月

底本

  • 中谷宇吉郎随筆選集第三巻
  • 朝日新聞社
  • 1966(昭和41)年10月20日