ほくりくのみんか
北陸の民家

冒頭文

郷里の加賀の片山津を出て、もう四十年になる。したがって、北陸の民家といっても、私の印象に残っているのは、四十年前の田舎家の姿である。 もっともこの頃は、日本中どこへ行っても、新しく建つ家は、どれもこれも、似たり寄ったりのものである。そういう意味では、私の印象に残っている四十年前の北陸の民家の姿の方が、かえって意味があるかもしれない。 今もその傾きがあるが、北陸と限らず、裏日本の田舎に共通し

文字遣い

新字新仮名

初出

「日本の民家第八回月報」美術出版社、1959(昭和34)年3月

底本

  • 中谷宇吉郎随筆選集第三巻
  • 朝日新聞社
  • 1966(昭和41)年10月20日