びとかがく
美と科学

冒頭文

美しいという言葉を、人々はふだん何気なくつかっているが、考えてみると、美しさにはいろいろな種類のものがある。 絵や彫刻や音楽など、いわゆる芸術の世界では、美がその対象であるから、話は簡単である。目で見たり、耳で聞いたりして、美しいと感ずれば、それが美である。その感じの内容や、どういうところに美を感ずるかという話は、その先の問題である。 ところで一般には、芸術は美を対象としているし、科学は真

文字遣い

新字新仮名

初出

「母のくに」1958(昭和33)年6月

底本

  • 中谷宇吉郎随筆選集第三巻
  • 朝日新聞社
  • 1966(昭和41)年10月20日