なんがさんだい
南画三題

冒頭文

科学的な南画 墨絵を始めてから、もう二十年近くになる。北支事変の一寸前頃、難病を患って、伊豆の伊東で、二年間療養したことがある。その時に覚えたのが、随筆を書くことと、墨絵とである。 その後随筆の方は、大分註文が多くなったが、墨絵の方は、あまり註文がなかった。無料(ただ)でやったのがいけなかったのかもしれない。もっともそればかりでなく、本質的な理由もある。何時まで経っても、上手にならないからで

文字遣い

新字新仮名

初出

白端溪硯「東京新聞」1956(昭和31)年6月23日<br>墨と硯と雪と「週刊サンケイ 1巻12号」サンケイ出版、1952(昭和27)年5月

底本

  • 中谷宇吉郎随筆選集第三巻
  • 朝日新聞社
  • 1966(昭和41)年10月20日