とらひこのさくひん
寅彦の作品

冒頭文

明治大正の時代については、いろいろな見方もあるが、日本民族が、精神的の飛躍をした時代であることには、間違いがない。西欧文明を急速に摂取して、日本が近代世界の仲間入りをした時代である。 この時代の文化人は、今日の文化人とは、教養の質と量とにおいて、大分違うようである。鴎外や漱石が、すぐ例に出されるが、日本人としての精神的骨髄が非常にしっかりしていて、その上に、西欧文明の深い学識を身につけていた。

文字遣い

新字新仮名

初出

「毎日新聞」1955(昭和30)年2月

底本

  • 中谷宇吉郎随筆選集第三巻
  • 朝日新聞社
  • 1966(昭和41)年10月20日