ごちそうのはなし |
| 御馳走の話 |
冒頭文
一 正月の御馳走 正月の御馳走というと、いつでも思い出す話がある。それは小林勇君が、露伴先生から聞いた話である。 大分前のことであるが、或る正月に、小林君が露伴先生のお宅を訪れたときの話である。多分昆布巻、数の子、田作(ごまめ)という、昔ながらの品々が、膳の上に並んでいたのであろう。それをつまみながら、例によって無遠慮な男のことであるから、「正月の御馳走といえば、どうしてこう不味いものばかり
文字遣い
新字新仮名
初出
正月の御馳走「東京新聞」1954(昭和29)年1月<br>感謝祭の七面鳥「山陽新聞」1954(昭和29)年11月
底本
- 中谷宇吉郎随筆選集第三巻
- 朝日新聞社
- 1966(昭和41)年10月20日