こばやしひでおとび
小林秀雄と美

冒頭文

先年、小林秀雄と、清荒神へ鉄斎の絵を見に行ったことがある。そのときは、一日中かかって、奥の広い座敷で、百幅近い鉄斎を見た。 天気のよい日で、白い障子が明るく、室内は森閑としていた。この部屋は、鴨居にたくさん折釘がついていて、十幅くらいの掛物が、ずらりと掛けられるようになっていた。 次の間に、軸箱がたくさん積み上げてあって、小僧さんが、大事そうにそれをもって来て、一幅一幅かけて行く。小林秀雄

文字遣い

新字新仮名

初出

「小林秀雄全集月報第五号」新潮社、1956(昭和31)年4月

底本

  • 中谷宇吉郎随筆選集第三巻
  • 朝日新聞社
  • 1966(昭和41)年10月20日