くたにのさら
九谷の皿

冒頭文

支那の古い時代の青墨の色に、興味をもったのは、高等学校の学生時代である。 四高へ通っていたころ、中村浩さんという日本画家と知り合いになった。油絵から転向した人で、色にはきわめて敏感であった。支那の名墨の墨色図鑑を自分でつくって、秘蔵していた。旧家やこっとう屋を回って、ちょっと磨(す)らせてもらって、その墨色を収集したものである。 それ以来、興味はもっていたが、名墨の物理的研究までは、さすが

文字遣い

新字新仮名

初出

「東京新聞」1961(昭和36)年3月

底本

  • 中谷宇吉郎随筆選集第三巻
  • 朝日新聞社
  • 1966(昭和41)年10月20日