えいが『じんるいのれきし』
映画『人類の歴史』

冒頭文

前から私は、妙な夢を一つもっている。それは『人類の歴史』という映画を作ってみたいというのである。甚だ唐突な話で、そんなことをいっても、何のことか全然見当がつかないかもしれないが、本人はかなりまじめなつもりなのである。 『人類の歴史』などというと、昔帝劇で十円の入場料をとって見せた『イントレランス』を連想されるかたがあるかもしれない。旧い話で、活動写真館といえば、二十銭くらいの入場料が相場だった頃

文字遣い

新字新仮名

初出

「心」平凡社、1954(昭和29)年5月

底本

  • 中谷宇吉郎随筆選集第三巻
  • 朝日新聞社
  • 1966(昭和41)年10月20日