ゆみとてっぽう
弓と鉄砲

冒頭文

弓と鉄砲との戦争では鉄砲が勝つだろう。ところで現代の火器を丁度鉄砲に対する弓くらいの価値に貶してしまうような次の時代の兵器が想像出来るだろうか。 火薬は化合し易い数種の薬品の混合で、その勢力(エネルギー)は分子の結合の際出て来るものである。その進歩が行き詰って爆薬の出現となったのであるが、爆薬の方は不安定な化合物の爆発的分解によるもので、勢力の源を分子内に求めている。もちろん爆薬の方が火薬より

文字遣い

新字新仮名

初出

「東京朝日」1937(昭和12)年11月

底本

  • 中谷宇吉郎随筆選集第一巻
  • 朝日新聞社
  • 1966(昭和41)年6月20日