せきひ
石碑

冒頭文

学制頒布七十年の記念式の新聞記事をよみながら、ふと思いついた話である。 何処かの国民学校で、児童たちをつれて遠足に行った。雨上がりで足をすべらせた児童の一人が河に落ちこんだ。その時先生の一人がすぐ濁流にとび込んでその児童を救い上げたが、自分は濁流の中に流されてしまった。 こういう場合には、その場所に石碑が建つであろう。そういう実例がたしか東京の近くにあったように記憶する。 ところで三十

文字遣い

新字新仮名

初出

「東京日日」1942(昭和17)年

底本

  • 中谷宇吉郎随筆選集第一巻
  • 朝日新聞社
  • 1966(昭和41)年6月20日