ゆきこんじゃくものがたり
雪今昔物語

冒頭文

一 もう十年前のことであるが、昭和十一年の秋に、北海道に大演習があり、天皇陛下が北海道に行幸されたことがあった。 その時に一日北大へ行幸の日があった。そして私は低温室の中で、雪の結晶の人工製作を天覧に供するという光栄の機会を得た。それが表題の『雪今昔物語』の機縁の起りである。 それから十年後の今年、昭和二十一年の暮に、私は東宮殿下への『雪』の御進講に上京し、引き続いて天皇皇后両陛下、さら

文字遣い

新字新仮名

初出

「自然」1947(昭和22)年6月

底本

  • 中谷宇吉郎随筆選集第二巻
  • 朝日新聞社
  • 1966(昭和41)年8月20日