びわこのみず
琵琶湖の水

冒頭文

初めから汚い話で恐縮であるが、琵琶湖へ小便をしたら、水嵩はどれだけ変るかという問題がある。 これは一寸面白い問題であって、日本の政治家ならば、大抵の人は「どれだけかというくわしいことは技術者に計算させればすぐわかるが、とにかく極めて少量ではあるが、小便の分量だけは水嵩が増す」と答えるであろう。如何にもそのとおりのように聞える。しかしこれが一番の愚答なのである。 琵琶湖の面積は六七〇平方キロ

文字遣い

新字新仮名

初出

「文藝春秋」1947(昭和22)年5月

底本

  • 中谷宇吉郎随筆選集第二巻
  • 朝日新聞社
  • 1966(昭和41)年8月20日