でいたんちそうわ
泥炭地双話

冒頭文

美しき泥炭地 北海道の景色の美しさの中で、比較的看逃されているのは、泥炭地の景色の美しさである。特に私は、晩秋の泥炭地の風趣とその色彩とに心を惹かれる。 冬を間近にひかえて、北国の空は毎日のように、鼠色の厚い層雲に蔽われる。そしてそういう空の下では、よく地平線の近くだけが綺麗に晴れていることが多い。そういう時には、その晴れ間は大抵は薄青磁色に冷たく透明に光っている。荒漠たる泥炭地の地平線は、

文字遣い

新字新仮名

初出

美しき泥炭地「科学と芸術」1946(昭和21)年3月<br>泥炭地の物理「農業朝日」1946(昭和21)年3月

底本

  • 中谷宇吉郎随筆選集第二巻
  • 朝日新聞社
  • 1966(昭和41)年8月20日