いねのいちにち
稲の一日

冒頭文

一日が二十四時間であることは、人間ならば、子供でも知っている。しかし稲がそれを知っているかどうか、それは多分稲専門の農学者にも、よくわかっていないであろう。 稲がもし一日が二十四時間であることを知っていたら、話はそれでおしまいである。しかしもし稲がそれを知らないとしたら、これは大変な大問題にまで展開する話である。少し大袈裟にいえば、七千八百万の日本民族の生死にかかわる問題が、その点にかかってい

文字遣い

新字新仮名

初出

「世界」1946(昭和21)年12月

底本

  • 中谷宇吉郎随筆選集第二巻
  • 朝日新聞社
  • 1966(昭和41)年8月20日