さんしろう
三四郎

冒頭文

一の一 うと〳〵として眼(め)が覚(さ)めると女は何時(いつ)の間にか、隣(とな)りの爺さんと話(はなし)を始めてゐる。此爺(ぢい)さんは慥(たし)かに前の前の駅から乗つた田舎者(いなかもの)である。発車間際(まぎは)に頓狂な声を出して、馳け込んで来(き)て、いきなり肌(はだ)を抜(ぬ)いだと思つたら脊中(せなか)に御灸の痕(あと)が一杯あつたので、三四郎の記憶に残つてゐる。爺さんが汗(あせ)を

文字遣い

新字旧仮名

初出

「東京朝日新聞」1908(明治41)年9月1日~1908(明治41)年12月29日

底本

  • 定本 漱石全集 第五巻
  • 岩波書店
  • 2017(平成29)年4月7日