じゅうぐんこう
従軍行

冒頭文

一 吾に讎あり、艨艟吼ゆる、     讎はゆるすな、男兒の意氣。吾に讎あり、貔貅群がる、     讎は逃すな、勇士の膽。色は濃き血か、扶桑の旗は、     讎を照さず、殺氣こめて。 二 天子の命ぞ、吾讎撃つは、     臣子の分ぞ、遠く赴く。百里を行けど、敢て歸らず、     千里二千里、勝つことを期す。粲たる七斗は、御空のあなた、     傲る吾讎、北方にあり。 三 天に誓へば、岩をも透す

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「帝國文學」 1904(明治37)年5月10日

底本

  • 漱石全集 第十二卷 初期の文章及詩歌俳句
  • 岩波書店
  • 1967(昭和42)年3月30日