まなつのにほんかい
真夏の日本海

冒頭文

この十年あまり、海といえば太平洋岸の海しか見ていないのであるが、時々子供の頃毎年親しんだ日本海の夏の海を思い返してみると、非常に美しかったという思い出が浮んでくる。 日本海の沿岸には一般に砂丘がよく発達している。浪打ち際から真白な砂が数丁も続いて小高い丘になり、その丘を越えたあたりから松林になっているのが普通である。そしてその松林を抜けた所に初めて漁村が見えることが多い。それというのは、冬の日

文字遣い

新字新仮名

初出

前半(いるのである。)まで「知性 第一巻第五号」1938(昭和13)年9月1日<br>後半「知性 第一巻第六号」1938(昭和13)年10月1日

底本

  • 中谷宇吉郎集 第二巻
  • 岩波書店
  • 2000(平成12)年11月6日