ながさきりゅうがく
長崎留学

冒頭文

維新の先覚者たちが、蘭学の勉強のために長崎へ行ったことは今更とり立てていい出すまでもないことであろう。しかしこの長崎留学の問題はよく考えて見ると、なかなか意味の深い示唆を与えてくれる問題であるように私には思われる。 一般にあの先覚者たちは、蘭学を学び西欧諸国の新知識を吸収して、維新の大業のある意味での基礎を作ったと考えられているようである。しかしわずかばかりの単語を通辞から教わったり、大変な苦

文字遣い

新字新仮名

初出

「文藝春秋 第十六巻第一号」1938(昭和13)年1月1日

底本

  • 中谷宇吉郎集 第二巻
  • 岩波書店
  • 2000(平成12)年11月6日