おんせん1
温泉1

冒頭文

私は温泉が非常に好きである。少年時代を北陸の温泉地に送ったせいかも知れないが、今でも少し身体の調子が悪い時などは、いつも温泉に行ったら直ぐに元気になるのだろうという気がする。元気な時はまたそれなりに、夏休みなどには気の向いた本でも持って、山の温泉へ行って見たいと考えることがしばしばある。 温泉が本当に身体のために良いかどうかは、現今の医学では決定的な論断は下せないという話である。まあ効くだろう

文字遣い

新字新仮名

初出

「中外商業新報」1939(昭和14)年1月12日~15日

底本

  • 中谷宇吉郎集 第二巻
  • 岩波書店
  • 2000(平成12)年11月6日