ゆきのはなし
雪の話

冒頭文

一 この頃新聞を見ていて気の付いたことは、スキーと雪の記事がこの数年来急に増してきたことである。主なものはスキー地の広告のようであるが、その他に純粋に雪と冬の山とを讃えるような記事もかなり沢山あるように思われる。何でも東京では山の雑誌が十種ばかりも出されていて兎(と)に角(かく)そのどれもが刊行を継続されているし、雪の朝は郊外電車がスキー車を出すという噂さえきくほどである。誰かがいわれたように氷

文字遣い

新字新仮名

初出

「経済往来 第十二巻第二号」1935(昭和10)年2月1日

底本

  • 中谷宇吉郎集 第一巻
  • 岩波書店
  • 2000(平成12)年10月5日