ぶんかしじょうのてらだとらひこせんせい
文化史上の寺田寅彦先生

冒頭文

現代のわが国のもった最も綜合的な文化の恩人たる故寺田寅彦先生の全貌を語ることは、今日の日本のもつ教養の最高峰を語ることであって、単に物理学の部門での先生の一門下生たる自分などのなし得るところではないかも知れないが、何人がその任に当っても恐らく非常に困難なことであろう。 先生は、外見上は全く異なる二方面において、今日のわが国の文化の最高標準を示す活動を続けられていた。その一は物理学者としてであっ

文字遣い

新字新仮名

初出

「大阪毎日新聞」1936(昭和11)年2月5日

底本

  • 中谷宇吉郎集 第一巻
  • 岩波書店
  • 2000(平成12)年10月5日