ふゆひこやわ ――そうせきせんせいにかんすることども――
冬彦夜話 ――漱石先生に関する事ども――

冒頭文

『猫』の寒月君『三四郎』の野々宮さんの話の素材が吉村冬彦(寺田寅彦)先生から供給されたものであるという話は、前に書いた通りである。漱石先生と冬彦との関係は、冬彦先生自身が書かれた「夏目漱石先生の追憶」の中に詳しく述べられている。私は丁度大正十二年の暮から四年余りの間冬彦先生の下で働いていたことがあって、その頃度々、曙町の応接間で色々の話を伺ったのであるが、その中で冬彦先生自身が語られた漱石先生の話

文字遣い

新字新仮名

初出

「漱石全集 第九巻 月報第十七号」岩波書店、1937(昭和12)年3月10日

底本

  • 中谷宇吉郎集 第一巻
  • 岩波書店
  • 2000(平成12)年10月5日