ゆきこうき
雪後記

冒頭文

今年の冬は、二度十勝岳へ行った。 そしてそれは、私にとっては、誠に待望の十勝行の再挙が遂に成ったものであった。 冬の十勝行ももう旧い話で、実のところ、今ではもはや私たちの仲間の雪の研究の生活の中では、何も事新しい話ではない。しかし私自身にとっては、あの五年前の冬の十勝行が名残りとなってしまっていたのである。というのは、その後ずっと健康に恵まれなかった私には、再びあの十勝の雪に埋れながら顕微

文字遣い

新字新仮名

初出

「文藝春秋 第八巻第九号」文藝春秋社、1940(昭和15)年6月1日

底本

  • 中谷宇吉郎集 第三巻
  • 岩波書店
  • 2000(平成12)年12月5日