えいがをつくるはなし
映画を作る話

冒頭文

去年の暮のことである。T映画会社の専務とかいう方が見えたというので、会って見たら、その用向きというのが、『雪』を映画にして見たいがどうかという話だったので、少々驚いた。 もっともよく話を聞いて見ると、ちょっと面白いので、人工雪の結晶が顕微鏡の覗野の中でだんだん生長して行くのを活動にとって、それを主眼にして、外に少し研究の雰囲気をとり入れた文化映画が作りたいという話なのである。 「実は社の文化

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論 第五十四年第六号」中央公論社、1939(昭和14)年6月1日

底本

  • 中谷宇吉郎集 第三巻
  • 岩波書店
  • 2000(平成12)年12月5日