ぼうかんど |
| 防寒戸 |
冒頭文
昭和十四年の夏、といえば、太平洋戦争勃発の二年前のことであるが、私は北海道の冬ごもりに適した家というつもりで、今の家をこしらえた。こしらえたといっても、何も自分で設計をしたというほどではなく、ただ平面図だけ描いて、O君に頼んだのである。 O君は当時は、私立の一小請負業者に過ぎなくて、坪三十円か四十円の借家普請まで引き受けたという程度の建築家であった。しかしそういうしがない業務にたずさわっている
文字遣い
新字新仮名
初出
「北方風物 一巻二号」1946(昭和21)年2月10日
底本
- 中谷宇吉郎集 第五巻
- 岩波書店
- 2001(平成13)年2月5日