ふたつのじょぶん
二つの序文

冒頭文

この二つの序文は、私が前から心がけていた『雪華研究の記録』につけるために書いたものである。初め戦争中にこの本を出そうと思って書いた序文と、敗戦後に書いた序文とを、二つ並べてこの随筆集の中に入れた。 『雪華研究の記録』は、稿を起してから、既に四年半になるが、未だに出来上らない。敗戦前一年半の悪夢のような生活と、敗戦後三年間の自分の心の焦燥とを思い返してみると、それも当然のことのような気がする。しか

文字遣い

新字新仮名

初出

「村の科学 六月号」1946(昭和21)年6月10日

底本

  • 中谷宇吉郎集 第五巻
  • 岩波書店
  • 2001(平成13)年2月5日