てんちそうぞうのはなし
天地創造の話

冒頭文

天地創造の話というと、たいへん大袈裟なことになるが、一昨年即ち昭和十九年の夏から、北海道の片隅で、そういう異変が現実に起きているのである。 今まで鉄道が通り畑が耕されていたただの平地であった所が、毎日二十センチくらいの速さで隆起して来て、人家や道路が、何時の間にか丘の上に持ち上げられてしまった。そのうちに噴火が起きて、そこに突如として、四〇五メートルもの高さの火山が現出したのである。その火山は

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人公論 四月再生号」中央公論社、1946(昭和21)年4月1日

底本

  • 中谷宇吉郎集 第五巻
  • 岩波書店
  • 2001(平成13)年2月5日