しじんへのちゅうもん
詩人への註文

冒頭文

「絵なき絵本」には、たいへん立派な作品がある。 それにあやかるというのも不遜な話であるが、「詩なき詩論」を考えてみようという気になった。それは表題の「詩人への註文」という無理な題を押しつけられた苦しまぎれに、ふと頭に浮んだテーマである。 私はほとんど詩を読まない。別に理由はないので、面白味がよく分らないからである。昔高等学校時代には、御同様に文学熱に少々浮かされたこともある。その頃の友人たちは

文字遣い

新字新仮名

初出

「至上律 第二輯」1947(昭和22)年11月30日

底本

  • 中谷宇吉郎集 第五巻
  • 岩波書店
  • 2001(平成13)年2月5日