ゆかわひできさんのこと
湯川秀樹さんのこと

冒頭文

十一月四日は、たまたま函館にある北大の水産学部で、文化講義をする日になっていた。 朝、学校へ顔を出したら、とたんに学部長の武田さんが、「先生、今朝のラヂオの臨時ニュースを御ききですか。湯川博士がノーベル賞を貰うことに決ったそうですが」と、やや興奮した語調で話し出された。 「そうですか。それはたいへんなニュースですね。ちっとも知りませんでした」「昨夜のニュースでは、多分決りそうだといっていまし

文字遣い

新字新仮名

初出

「文藝春秋 第二十八巻第一号」文藝春秋新社、1950(昭和25)年1月1日

底本

  • 中谷宇吉郎集 第六巻
  • 岩波書店
  • 2001(平成13)年3月5日