ほろびゆくこくど
亡び行く国土

冒頭文

一 洪水か電力危機か 昭和二十六年の秋は、電力の危機が全国的に叫ばれ、その中でも関西地方の電力危機は、文字通りの危機であったらしい。大阪附近の工場がとくにひどくて、電力不足のために工場が休む、その生産低下による損害のために、中小企業家は倒産に瀕したと騒がれていた。 その理由は昨年の夏から秋にかけて台風がこなかったために、水が不足になり、そのために生じた電力危機であるといわれている。日本も戦争

文字遣い

新字新仮名

初出

「日本の発掘」法政大学出版局、1952(昭和27)年7月20日

底本

  • 中谷宇吉郎集 第六巻
  • 岩波書店
  • 2001(平成13)年3月5日