しんぺんざっき ――『にほんのこころ』をめぐって――
身辺雑記 ――『日本のこころ』を囲って――

冒頭文

一 私がものを書き出したのは、四十くらいからのことで、まだ十二、三年にしかならない。それにしては、ずいぶんたくさん書き散らしたもので、曠職のそしりは、所詮まぬかれないものと、内心観念している。 しかし少しくらい、あるいは大いに、評判が悪くなっても、それを償ってあまりあるくらいの歓びがある。どんなに小さいものでも、ものを創る歓びは、何ものにも換えられない。実験が一段落ついて、何か瑣細なしかし新

文字遣い

新字新仮名

初出

「文学界 第六巻第一号」文藝春秋新社、1952(昭和27)年1月1日

底本

  • 中谷宇吉郎集 第六巻
  • 岩波書店
  • 2001(平成13)年3月5日