きちえもんとかみなり
吉右衛門と神鳴

冒頭文

ついさき頃の『心』の中に、吉右衛門氏と小宮(豊隆)さんとの対談が載っていた。近来にない面白い対談で、芸というものの面白さと恐ろしさとがよく出ていた。 その中で、一見あまり芸とは関係のないように見える話が一つある。それは吉右衛門氏が、非常な神鳴嫌いだという話である。神鳴が出そうな日は、何時間も前から、気分が悪くなって、今日は雷がきそうだということが分る。そしてそれがいつでもちゃんと当るそうである

文字遣い

新字新仮名

初出

「文藝春秋 第二十八巻第九号」文藝春秋新社、1950(昭和25)年6月25日

底本

  • 中谷宇吉郎集 第六巻
  • 岩波書店
  • 2001(平成13)年3月5日