かつらはま |
| 桂浜 |
冒頭文
漱石の俳句の中に 寅彦桂浜の石数十顆を送る 涼しさや石握り見る掌 という句がある。如何にも涼しさのあふれる名品である。そしてその涼しさの中に、寅彦の漱石に対する思慕の情と、漱石のそれに応えるこころとが、感じとれる。 この句は、明治三十二年の作で、当時漱石は五高で英語を教えていて、寅彦はその愛された生徒の一人であった。この年の夏、寅彦は五高を卒業して、東大の物理学科に入学した。桂浜の石を贈っ
文字遣い
新字新仮名
初出
「西日本新聞」1955(昭和30)年8月9日夕刊
底本
- 中谷宇吉郎集 第八巻
- 岩波書店
- 2001(平成13)年5月7日