わかきひのおもいで
若き日の思い出

冒頭文

私の中学時代は、大正の初めごろであって、明治時代の先生方とくらべたら、だいぶ文明開化になっていた。しかし郷里が北陸の片田舎であり、中学があった小松の町も当時はまだ小さい町であった。それで中学時代のことをいまから思い出してみると、ずいぶん旧式な教育をうけたものだという気がする。 中学の五年間は、完全に寄宿舎生活をした。その寄宿舎生活で、いま頭に一番残っていることは食事がまずかったことである。一月

文字遣い

新字新仮名

初出

「若き日の思い出」旺文社、1956(昭和31)年1月30日

底本

  • 中谷宇吉郎集 第七巻
  • 岩波書店
  • 2001(平成13)年4月5日