かがくとこっきょう
科学と国境

冒頭文

はしがき 科学と国境という問題は、以前から論議されてきた課題であるが、原子力の解放にまで到達した今日の新しい時代になってみると、急激にその切実さを増してきた感がある。 第二次世界大戦の前頃、一時この問題が、大分騒がれたことがある。あの時代は、一口にいえば、国家主義的な風潮が、世界的に瀰漫(びまん)した時代であった。従ってこの問題は、とかくそれぞれの国における軍の機密の問題と、関連がつけられ勝

文字遣い

新字新仮名

初出

「文藝春秋 第三十二巻十八号」文藝春秋新社、1954(昭和29)年12月1日

底本

  • 中谷宇吉郎集 第七巻
  • 岩波書店
  • 2001(平成13)年4月5日