だらくろん(ぞくだらくろん)
堕落論〔続堕落論〕

冒頭文

敗戦後国民の道義頽廃(たいはい)せりというのだが、然(しか)らば戦前の「健全」なる道義に復することが望ましきことなりや、賀すべきことなりや、私は最も然らずと思う。 私の生れ育った新潟市は石油の産地であり、したがって石油成金の産地でもあるが、私が小学校のころ、中野貫一という成金の一人が産をなして後も大いに倹約であり、停車場から人力車に乗ると値がなにがしか高いので万代橋(ばんだいばし)という橋の袂

文字遣い

新字新仮名

初出

「文学季刊 第二号(冬季号)」1946(昭和21)年12月1日

底本

  • 堕落論・日本文化私観 他二十二篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2008(平成20)年9月17日