きょうそのぶんがく ――こばやしひでおろん――
教祖の文学 ――小林秀雄論――

冒頭文

去年、小林秀雄が水道橋(すいどうばし)のプラットホームから墜落して不思議な命を助かったという話をきいた。泥酔(でいすい)して一升ビンをぶらさげて酒ビンと一緒に墜落した由(よし)で、この話をきいた時は私の方が心細くなったものだ。それは私が小林という人物を煮ても焼いても食えないような骨っぽい、そしてチミツな人物と心得、あの男だけは自動車にハネ飛ばされたり川へ落っこったりするようなことがないだろうと思い

文字遣い

新字新仮名

初出

「新潮 第四四巻第六号」1947(昭和22)年6月1日

底本

  • 堕落論・日本文化私観 他二十二篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2008(平成20)年9月17日