あくさいろん
悪妻論

冒頭文

悪妻には一般的な型はない。女房と亭主の個性の相対的なものであるから、わが平野謙(ひらのけん)の如(ごと)く(彼は僕らの仲間では大愛妻家という定説だ)先日両手をホータイでまき、日本が木綿(もめん)不足で困っているなどとは想像もできない物々しいホータイだ。肉がえぐられる深傷(ふかで)だという無慙(むざん)な話であるけれども、彼の方が女房の横ッ面をヒッパたいたことすらもないという沈着なる性格、深遠なる心

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人文庫 第二巻第七号」1947(昭和22)年7月1日

底本

  • 堕落論・日本文化私観 他二十二篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2008(平成20)年9月17日